法話:若者よ 死ぬな!生きろ!

若者よ 死ぬな!生きろ!
昭和寺 釋 良弘(山田良弘)

先日、『自殺対策白書』が発表された。それによると、2013年の15〜39歳の死因のトップ 特に20歳代の男性は死因全体の5割以上が自殺だったという。

「あれから6年近くの月日が経ち、自分はやはり犯人の弟なんだと思い知りました。加害者の家族は幸せになっちゃいけないんです。それが現実。僕は生きることをあきらめようと決めました。死ぬ理由に勝る、生きる理由がないんです。どう考えても浮かばない。 何かありますか。あるなら教えてください。」
そう語った青年は、その一週間後自ら命を絶った。
青年とは、日本の犯罪史上稀にみる惨劇となった、秋葉原連続通り魔事件の犯人 加藤智大の実弟 28歳。
彼は身元・素性を隠すために、事件当日に失職し当時住んでいたアパートを引き払った。 事件後数か月は彼の名前を検索するとヒットする状態にもあったという。そして、職を転々とした。結婚を前提とした彼女とは事件後も同棲を続けていたが、彼女の口から「あなたが犯人の弟だから・・・」という耳を疑うような言葉によって関係は破綻していった。 彼は事件からの日々を「加藤の弟」というレッテルにより、「幸せを求めちゃいけない」心境で過ごしていたことを察することができる。(取意:週刊現代4/26号)

 

わたしの大好きな現役プロレスラーに「ハヤブサ」がいる。「ハヤブサ」は数年前の試合中のアクシデントにより現在リングには上がっていない。先日お会いする機会があり、対峙した時の腕や首の細さはとても現役プロレスラーのものではない。しかし、本人もファンも周りの関係者も「ハヤブサ」の現役プロレスラーとしての地位を否定していない。今でも車いすから立つのもままならぬ身体でもだ。
アクシデント直後、彼は全身麻痺だった。
「ハヤブサ」は云う。「全身麻痺の体では自分で死ぬこともできなかった。自分で死を選べるって事は、それだけの可能性があるって事なんだから、それだけで十分恵まれてるんだ。 これからどう生きるかで、人生には思わぬ展開が待ってて面白いぞ。今は泣きながらでも笑い飛ばしてやれ。きっとホントに笑えるようになる。」

我々、僧侶という立場のものたちは、人が死んでから縁があると多くの人たちに思われているようですがそうではありません。生きることをいっしょに悩み・考え・実行する立場です。生きている時にこそ有縁する者が僧侶であるといっても過言ではありません。お寺や僧侶に対して、敷居の高いものと考えている人がここにいたら、ぜひ、その敷居をまたいでみてください。それほど高くないですから。