学ぶ・考える

人権を考える

名古屋教区第30組
第1回「人権問題」学習
2006年1月28日
真宗大谷派解放運動推進本部・訓覇 浩

人間が解放されるとは
-「呪はれの世の悪夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあつた」-


1. 差別、人間の何を奪うのか

(1)ふるさとが奪われる

・部落差別
→「ふるさと」丸岡忠雄
"ふるさとをかくす"ことを/父は/けもののような鋭さで覚えた
"ふるさとをかくす"ことを/母は/氷のような冷たさで覚えた
ふるさとをあばかれ/ふたたびかえらぬ友がいた
ふるさとを告白し/許婚者に去られた友がいた
わが子よ/おまえには/胸張ってふるさとを名のらせたい
瞳をあげ 何のためらいもなく/"これが私のふるさとです"と名のらせたい

(2)言葉・文化が奪われる

・アイヌ民族差別
・沖縄に対する差別

(3)名が奪われる

・ハンセン病差別
・在日コリアンに対する差別

2. 解放運動は何を取り戻す闘いか

(1)水平社宣言に学ぶ

・「なほ誇り得る人間の血は涸れずにあつた」と宣言する運動

(2)「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟の闘いに学ぶ

・国賠訴訟という闘いの意義

3. 真宗門徒として

(1)水平社創立と浄土真宗

(2)『中道』誌差別事件に際しての曽我量深先生の頷きに学ぶ

・「異なるを歎く」
→「この言葉は使ってならないということを重々知っておりながら、この言葉によって著しく傷つけられるお方々が現実にあるということに思い至らなかった。(略)私がそんな差別的言辞を使ったということは、自分が機の深信を欠いていることを暴露したお恥ずかしいことであります(略)」→見えないという事実への悲しみ
→「機の深信ということが、こういう具体的な人間の事実を頷くことにより、共存する人間の地平をひらいていくような原点になっていかなくては、機の深信ということも観念にしか過ぎない -廣瀬杲-」

(3)私たちはどのような世界・国に生きたいと願うのか

・「同朋社会の顕現」という課題

資料(水平社宣言)

宣言

全國に散在する吾が特殊部落民よ團結せよ。
長い間虐められて來た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた吾らの爲の運動が、何等の有難い効果を齎らさなかった事實は、夫等のすべてが吾々によって、又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば、此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集團運動を起せるは、寧ろ必然である。
兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇迎者であり、實行者であった。陋劣なる階級政策の犠牲者であり、男らしき産業的殉教者であったのだ。ケモノの皮を剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪はれの夜の惡夢のうちにも、なほ誇り得る人間の血は、涸れずにあった。そうだ、そして吾々は、この血を享けて人間が神にかわらうとする時代にあうたのだ。犠牲者がその烙印を投げ返す時が來たのだ。殉教者が、その荊冠を祝福される時が來たのだ。
吾々がエタである事を誇り得る時が來たのだ。
吾々は、かならず卑屈なる言葉と怯懦なる行爲によって、祖先を辱しめ、人間を冒涜してはならなぬ。そうして人の世の冷たさが、何んなに冷たいか、人間を勦る事が何であるかをよく知ってゐる吾々は、心から人生の熱と光を願求禮讃するものである。
水平社は、かくして生れた。
人の世に熱あれ、人間に光りあれ。

綱領
一、特殊部落民は部落民自身の行動によって絶対の解放を期す
一、吾々特殊部落民は絶対に経済の自由と職業の自由を社会に要求し以て獲得を期す
一、吾等は人間性の原理に覚醒し人類最高の完成に向って突進す

大正十一年三月三日
全國水平社創立大會