法話:母の死を願いました
母の死を願いました 正覺寺 釋 智遵(佐合智遵) |
Aさんのお母さんは、17年間ほとんど寝たっきりの状態で、去年95歳の生涯をまっとうされ、お浄土へ旅立たれました。お葬式もすみ、7日ごとの法要のある日、Aさんは、ポツポツと話して下さいました。
「母は、介護の人にお風呂に入れてもらい、新しいねまきに着替えさせてもらって、気持ちがよかったのでしょう、すぐに、おしっこをして、ぬらしてしまったのです。」
「介護の人に対する気がねもあったのですが、母に、言ってはいけないことを言ってしまったのです。思ってはいけないことを思ってしまったのです。」
「母さえいなければ、旅行にも行けるし、観劇も、音楽会も、デパートにも行けるのに、と思いました。」
「母が亡くなった今は、どこへも行きたくありません。仏壇の前でじっと座っているだけです。」
Aさんとお母さんは、仲の良い母子でした。永年の看病は、心が通いあっており、お母さんは幸せそうでした。親鸞聖人のおっしゃる悪人とはAさんのことだと思いました。Aさんには、亡くなられたお母さんの声が確かに聞こえるはずです。
「永い間の看病ありがとうね、これからは迷うことなく仏法によって生きて下さい。」
「お寺様へ行って、仏法を聞きなさい。あなたの為に仏法を説いて下さいますよ。」
「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや。」
善人でさえ救われるのに、悪人は救われなくてはなりません(親鸞聖人)
Aさん、貴いお話をありがとうございました。