法話:長さと幅と深さ
長さと幅と深さ 法光寺 釋 慧通(島津通) |
以前金子大栄という先生の本を読んでいたら、「人生は長さだけではない、幅もあれば深さもある」という言葉に出会いました。
言われてみれば当たり前のことですが、実際に私たちがこだわっているのは、長さです。「あの人は50で死んでしまった」とか「あの人のお父さんは95まで生きた」とか、年齢の話は日常よく耳にします。なんと言っても年齢は数字になっていますので、基準にしたり比較したりしやすいのです。
しかし、自分の思うようにならないのも年齢です。長生きしたくても病気や事故で亡くなる方もありますし、生きていたくないと思いつつ生き続けている人もいます。
それに対して、その人の姿勢や努力で変わってくるのが、幅と深さでしょう。世界中を旅行して回ったり、あらゆる職業を経験したりする人もいますが、そんなことをしなくても、色々な人と付き合ったり好奇心を燃やしていろいろなものに興味を持つことによって、幅は広がります。
また、深さは人生の色々な体験をいかに「経験する」かによって左右されます。
以前、俳句を趣味にする人と旅行したことがあります。私は「きれいな景色だなあ」と思って帰ってきただけでしたが、後日俳句見せてもらって「この人はこんな風に景色を見ていたのか」「この人はあの美しさに心を動かされたのか」とあらためて感動したことがあります。同じ旅行をしても、見ているものは違ったのです。
一つ一つの体験をいかに経験するのか。それを学び、人生をより深く生きるために心を開き想像力を高めることが、人生を豊かにしますし、佛教を学ぶということの中身ではないでしょうか。。