法話:「よかった」
「よかった」
上宮寺 釋 顕正(長谷川顕) |
「よかった」という言葉、どのような時に使い、どのような時に耳にしましたか?以前、バスに乗った時のことです。消防車と救急車が、サイレンを鳴らしながら走っていきました。それを見て不見識にも「自分や家族でなくてよかった」と思ってしまいました。
その時、3,4歳くらいの男の子が、「あ!消防車と救急車だ!」と、はしゃいでいました。すると、その男の子の付き添いのおばあさんが、「消防車と救急車を見る事ができて、よかったね」と話すのが聞こえてきました。
それを聞いて、人のいのちに関わっているかもしれないのに「よかった」という言葉に釈然としないものを感じました。
救急車を見れば、「搬送されている人は大丈夫か?」と心配する反面、「自分や家族でなくてよかった」と思ってしまいます。そして、自分が子供の頃を振り返ってみると、やはり、この男の子のように消防車などを見たときは喜んでいましたし、おばあさんにしても、よろこぶ孫の姿を見て、口にした言葉なのでしょう。自分がおばあさんの立場なら、同じように「よかったね」と、言ってしまうかもしれません。
「よかった」という言葉は、よく使われる言葉だと思います。しかし、人のことを考えず、自分だけが「よかった」、自分に関係なくて「よかった」という事があります。自分中心に生きているから、人のことが見えないのでしょう。
この出来事を通し、自分もまた、自分中心に生きていることに改めて気づかされました。自分中心の生き方でなく、すべての人に「よかった」と言える、そのような生き方をしていきたいものです。