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法話:幸せになる方法

幸せになる方法
正覚寺 釋尼妙典(佐合典子)

今すぐ幸せになる方法があります。
まず、息を止めます。そしてできるだけ我慢します。
それだけです。苦しくなったら息を吸って下さい。
・・・どうでしょう。息ができるって幸せだな~!空気があるって素晴らしい!と思いませんでしょうか。

寒さもゆるみつつあった春の初め頃、祖母が階段から落ちて、入院しました。意識不明の重体になり、集中治療室で沢山のチューブにつながれて命を留めていました。ベッドの上で横たわっていた祖母は、自分の力では何もできませんでした。食べ物を飲み込むことも、起き上がることも、息をすることさえも!

「人の生を受くるは難く、やがて死すべきものの、今命あるのは有難し」法句経
(人が生を受けるのは難しいことで、いつか死ぬ身である今日、命があるということは有難いことだ)

周知のこととは思いますが、「ありがたい」や「ありがとう」の言葉は、仏教から来ているようです。玄奘三蔵が、この仏典を漢文に訳した「有難」が日本語の「ありがたい」という言葉の元のようです。

命があることは有難いことだ。呼吸ができるだけで幸せ。目が見えることも、耳が聞こえることも、空気が当たり前にあって、太陽がのぼって朝になって、雪が溶けると春がきて、水があり、緑があり、親や友達、日々出会う人たちがいる。当たり前のようにそこにある。

半年後、祖母は無事退院することができました。一見なんでもなく当たり前のように過ぎていく日常は、実は有難く幸せで満ちていました。失ってみてはじめて実感いたしました。


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